ある日 うさぎはいつものように 戸を前足で叩いた。
——とんとん、とんとん。
「やあ うさぎさん。こんにちは。」
ひょっこりと顔を出したのは もぐらだった。
もぐらは 長いつめで目をこすりながら 小さくあくびをした。
「やあ もぐら。眠そうだね。ひょっとして、まだ寝てた?」
「うん 実は。――もう夜になったんだね。そろそろ起きようかしら。」
もぐらは、とっぷりと暮れた空を眺めながら、小さな目をぱちくりした。
「そうさ。ごらんよ。今日はまた、とびきり月がきれいなんだ。」
うさぎは、後ろ足でぴんと立つと、ちょこんとした前足で空を指さした。
黒く染まった木々のすきまから、きらきらした満月が覗いていた。
「わあ きれい。 丘の上から見たら、もっとすてきだろうね。」
「うん。だからさ、いっしょに丘の上まで行こうと思って。」
「ありがとう。――ちょっと待って、すぐに準備をするから。」
もぐらは穴に戻り、しめった土で寝ぐせを直すと、お気に入りの赤いスカーフを巻いた。
夜空の下はもうすでに、寒くなってきたからだ。
そうしてふたりは、丘の上まで、ぴょんぴょん ほりほり かけていった。
途中、うさぎが木の実をかじっていたので、少しだけもぐらのほうが先に着いた。
丘の上でふたりは、並んで月を見あげた。
きらきらした満月が、白くかがやいていた。
きらきらした満月が、白くかがやいていた。
「あそこには 誰が住んでいるんだろう。きっと、とても暖かいだろうね。」
「ぼくは昔、あそこに住んでいたんだ。 とても暖かかったよ。」
「本当かい、うさぎさん。」
「本当さ、もぐら。」
ふたりは顔を見あわせて笑った。
赤いスカーフが風に乗り、真っ白な月へ飛んでいった。
@洗濯用洗剤25
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