せかいちずのワッペン

本ブログでは、サークル「せかいちずのワッペン」のメンバーが、自作の詩を思い思いにアップしていきます。よろしくお願いします! twitter.com/sekai_wappen

ある日 うさぎはいつものように 戸を前足で叩いた。

——とんとん、とんとん。

「やあ うさぎさん。こんにちは。」

ひょっこりと顔を出したのは もぐらだった。
もぐらは 長いつめで目をこすりながら 小さくあくびをした。 

「やあ もぐら。眠そうだね。ひょっとして、まだ寝てた?」
「うん 実は。――もう夜になったんだね。そろそろ起きようかしら。」

もぐらは、とっぷりと暮れた空を眺めながら、小さな目をぱちくりした。

「そうさ。ごらんよ。今日はまた、とびきり月がきれいなんだ。」

うさぎは、後ろ足でぴんと立つと、ちょこんとした前足で空を指さした。
黒く染まった木々のすきまから、きらきらした満月が覗いていた。

「わあ きれい。 丘の上から見たら、もっとすてきだろうね。」
「うん。だからさ、いっしょに丘の上まで行こうと思って。」
「ありがとう。――ちょっと待って、すぐに準備をするから。」

もぐらは穴に戻り、しめった土で寝ぐせを直すと、お気に入りの赤いスカーフを巻いた。
夜空の下はもうすでに、寒くなってきたからだ。

そうしてふたりは、丘の上まで、ぴょんぴょん ほりほり かけていった。
途中、うさぎが木の実をかじっていたので、少しだけもぐらのほうが先に着いた。

丘の上でふたりは、並んで月を見あげた。
きらきらした満月が、白くかがやいていた。

「あそこには 誰が住んでいるんだろう。きっと、とても暖かいだろうね。」
「ぼくは昔、あそこに住んでいたんだ。 とても暖かかったよ。」
「本当かい、うさぎさん。」
「本当さ、もぐら。」

ふたりは顔を見あわせて笑った。
赤いスカーフが風に乗り、真っ白な月へ飛んでいった。



@洗濯用洗剤25

あたりまえにひとがいる

あなたもそこにいる

あなたはうんとてをのばす

それにきづいたひとがいる

そのひともうんとてをのばす

それにきづかないあなたがいる

それにきづいたひともいる

のらねこはみんなのすきまを

そっぽをむいてとおりすぎる

のらねこのあしにはひもがある

そのひもはほどけていって

いろんなおおきさのあしに

ひっかかってひとにみえない

きょくせんをつないでいく

ひとのきづかないせかいで

ずうっと、ずうっと





@バナジウム

透きとおる雨の中を
待ちぼうけ

黒ずんだアスファルトから
首を伸ばし

春風とともに
貴方との逢瀬を待つ


@洗濯用洗剤25

本日開催のコミティア141に参加いたしました。

想像以上に多くの方に本を手に取っていただき、大変嬉しく思っております。

引き続き、サークル員一同、楽しみながら創作活動を続けてまいります。

今後ともよろしくお願いいたします。


@せかいちずのワッペン
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ブルーベリーの木を見つけたら

ひみつきちまで、あと少し

あと何歩? あと何分?


跳ねる気持ちはとめられない

木漏れ日のトンネルをくぐって

青々とした芝草を踏みしめた

明日の太陽がまぶしい


視線をひとりじめにできるこの場所で

大の字になり口ずさむ

きみの気持ちはどんな色?


明日にかける虹の橋

鮮やかな今を瞳に焼き付けた




@せかいちずのワッペン(連詩)

9月4日に開催されるコミティア141に出展させていただきます(ブース:ま07a)。

新刊詩集『星くずのコンパス』を頒布予定です。

ご来場を心よりお待ちいたしております。


@せかいちずのワッペン

後悔した言葉

謝りたくって紙に書いた

いとも容易く千切れた


丸まった背中

慰めたくって肩に触れた

さらさらと崩れ落ちた


無邪気な掌

河原の石ころ

引き出しの一番奥


あの日から、眠ったまま




@バナジウム

夜に見つめる小さきものは
なにかに怯えて
なにかに戸惑い
なにかを慈しみながら
なだれる感情の渦に飲み込まれてゆく

どこへ辿り着けるかもわからない
けれど立ち止まっているよりはマシだと
まるで自分に言い聞かせるかのように
自ら飛び込んでゆく様は
気高いのか
滑稽なのか
わからない
わからないけれど
そんなことはどうでもいいんだ
いまはただ
絶え間なく押し寄せる波の如く
この私に迫りくる厄介な日常のとばりを
振り払って蹴飛ばして大声でなじってやりたい


@梅ココ

無垢なかけらを摘むように
一粒ずつのみずみずしさを味わって
こだわり選び抜かれた小さな粒は
太陽の光を浴びて気持ちよさそうに
静かに漲っている

@梅ココ

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